北海道埋蔵文化財センター研修「埋蔵文化財発掘調査のデジタル資料に関する諸問題」前半 |
埋蔵文化財資料のデジタル化をテーマに行われました。
埋蔵文化財保護行政の現状と課題・埋蔵文化財発掘調査のデジタル脂漏に関わる指針解説
講師 文化庁文化財部記念物か埋蔵文化財部門文化科学技官 川畑 純さん
埋蔵文化財をめぐる状況
- 発掘届出件数は増加傾向
- 工事に伴う調査は横ばい状態
- 職員数はH12ピークをむかえ、H20頃から市町村は横ばい状態。
- 正規職員は減員、非正規職員が増加。
- H23年度で35歳以上とそれいかで職員数が断絶があった。
- H27では40歳以下が少ないので世代交代の問題がある。
水中遺跡の保護
- 文化庁では近年水中遺跡保護に力を入れており、検討会を実施し、中間まとめを出している。
- 韓国では水中遺跡の調査船を2隻もっており、調査を進めている。
- 国を代表するような沈没船の引き上げ調査や盗掘目的のトレジャーハンターへの対応として調査が行われている。
- 日本ではそのような問題が顕在化していないので調査が進んでいない経緯があった。
デジタル技術の導入にかかる検討
- 埋蔵文化財だけ、フィルムや紙だけで業務を行うことは難しくなっている。
- 機材のデジタル化の中でカメラのあり方が特に問われる。
- 印刷本、高解像度PDF、低解像度PDFの合計3冊の報告書が考えられる。
- PDFと紙の住み分けをどうするか、導入の検討課題。
- 既存資料のデジタル化も課題となっている。
- デジタルデータはコピーが容易なので、とにかくバックアップが重要になる。
- データの長期保存のための将来的なデータの増加やシステムメンテナンスが必要となる。
デジタルカメラの導入
- フィルムカメラの生産台数が減っていることは当然だが、デジタルカメラも生産・出荷台数が減っている。
- 35mmカメラは2社3機種、中判は1社1機種しかない。
- フィルム生産量はピーク時の半分となっており、現像・焼付業も半分以下となっている。
- 版下原稿のデジタル化により、サイズ制限が有り、フィルムの精度を再現できなくなる可能性。
- したがって、デジタルカメラでフィルムと同じ精度を確保し、長期保存することが基本方針となる。
- デジタルカメラの導入は地域差があって、北海道東北では60%がデジタル移行しているが、関東以西では20%代となっており、現像の問題が有る。
- 埋蔵文化財の現場で使用される撮像素子サイズはAPS-Cサイズ以下のデジタルカメラが多い。
- デジカメだけを使っている場合にはコンデジが実は一番多い結果となっている。
- 職員の私物をつかっている自治体も多い。
- カメラスペックの差が自治体間で広がっている。
- 保存形式はJPEGが中心となっているが、非可逆圧縮形式で保存には適さない。
- デジタルカメラの巨大なデータを扱うパソコンがない自治体や長期保存体制がない自治体も多い。
- JPEGはExifを書き込めるメリットがあることから、TIFFと組み合わせるとPNGなどの可逆圧縮形式よりも優れている。
報告書のデジタル化
- 印刷報告書を前提として、高精度PDFはバックアップとして、 低精度PDFを活用目的で公開することが前提となる。
- 既存の報告書のデジタル化が今後と課題になる。
質問:専門職員数の統計について、専門職として学芸員等の発令はあっても、実際には他の業務が大半となっているケースも多い。市町村の専門職員数は減少数が少ないようにみえるが、事実上の任用替えが進んでいるのではないか。
回答:職員調査の中で質問項目を作成している。それを汲み取りきれないで調査をしている。取りまとめ方法で変えられるのか検討を要する。教員から埋蔵文化財に来る方、専門職として採用されているケースや事務吏員採用もある。統計調査の中では一元的に示すところが難しい。文化財保護法改正で専門職員の配置で議題が出ている。埋蔵文化財だけを対象としているわけではない。研究委員会の中で埋蔵文化財担当職員の格議論をしたことがある。視覚の話もしていかなければならない。痛感まとめで終わっているので検討を進めたい。
質問:自治体職員数も40歳代以下が少ないと思うが、自治体職員全体の中での専門職員配置率はどうなっているのか。
回答:H24年度段階はほぼ同じ数で40歳代以上はいるが、H27年度はグラフが山形になっている。専門職で入った人が教育委員会全体で人事が硬直していたものが改善したので多岐にわたる業務に変わったということがあるのではないか。文化財全体では年齢構成は良い面がある。ただし数字として適切に出ているのかという見方がある。
質問:今あるデータをデジタル化することに対して埋蔵文化財活用事業の補助対象となるのか。
回答:保存管理については補助対象外。活用のための事業として「地域の特色のある埋蔵文化財活用地頭」を活用してほしい。デジタル化だけでは補助事業の対象にはならない。企画展示などを行うためのデジタル化としての位置づけで、そのような組み合わせ方を考えてほしい。収蔵庫の整備を活用するために整備するのだ、という目的をもっていただければよい。
質問:撮像素子サイズをフルサイズまたは中判としているが、埋蔵文化財写真に必要な水準としてどのような基準を考慮した上での記述なのか。
回答:奈文研でも検討したが、フィルムカメラとの対応関係がある。センサーサイズが小さいと広角が取りにくい。引き伸ばしのときに。35mmのカメラでも耐えられたかもしれない。小さなセンサーでフルサイズのレンズを使うとトリミングをしていることになるので記録として不適切。「埋蔵文化財におけるデジタル技術の導入について1」で推奨するカメラの仕様について示している・。
質問:長期保存のバックアップについて、保存するメディアに関する議論はどうなっているか。
回答:ハードディスクは3〜4年、光磁気ディスクはもう少し長いが完全ではない。クラウドストレージはバックアップとしては適切だが行政としてどうなのか。複数の方法を組み合わせることが現状ではベストだと考えている。
後半へ続きます。
こちらから。
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