第34年次自治研全道集会参加記録 |
個人的には、初日のパネルディスカッションが興味深かった。
網走川河口とモヨロ貝塚(写真左側)
日時:2012年9月7日(金)13時30分〜9月8日(土)12時00分
場所:網走市セントラルホテル(全体集会)、エコーセンター(分科会)
集会基調提起
講師:黒瀧秀久氏(東京農業大学)
地域経済の立て直しとしてこれまでにとられてきた「企業誘致」という手法は、地域外部の資本や人材に頼る点で「外発的発展」と表現できる。
現在、「外発的発展」の限界が明らかとなり、「内発的発展」が期待される。
「内発的発展」は、もともと発展途上国の発展モデルとして提起された概念だが、近年では地域活性化を進めるキーワードとなっている。
「内発的発展」は、地域の価値を再点検し、地域の潜在価値を顕在化することによって可能となる。
農業の「6次産業化」は「内発的発展」の手法である。
現在、農業生産とそれ付帯する加工や外食産業の経済比率は、
農業生産13.5兆円(18.4%)
加工産業39.2兆円(53.2%)
外食産業20.9兆円(28.5%)
となっており、農業生産が産み出す経済価値の80%以上が加工やサービスとして主に地域外で消費されているのが現状である。
加工(2次産業)やサービス(3次産業)を地域内で行い、1次産業産品の付加価値を高め、地域内で提供することが、外部に奪われた一次産業の付加価値や雇用を取り戻すことが「6次産業化」の目的となる。
6次産業化の成功事例として、大分県大山町の事例と富良野市の事例がある。
大分県大山町の事例
大分県大山町では、狭小な山間の農地で畜産と稲作が行われてきたが、1960年代にこれを梅生産に切り替え、さらに梅干しや梅を使ったリキュール類の加工により高付加価値商品化することに成功した。
大山町では、現在でも新たなアイディアによる加工食品の開発に農家自身が積極的に取り組んでおり、自発的な6次産業化が進められている。
過去の成功事例を「物語」として地域が共有し、それを外部に対してプレゼンできたことが、持続的に地域の付加価値を引き出す取り組みにつながっている考えられる。
北海道富良野市の事例
北海道富良野市は北海道有数の観光都市として知られているが、観光客は郊外の観光スポットに集中し、中心市街は衰退が進んでいた。
富良野市では中心部の賑わいを取り戻すため、「フラノ・マルシェ」としてカフェやおみやげ販売店、イベント会場を含んだ複合商業施設を設置し、観光客を市街中心部に引き寄せる取り組みを行った。
その結果、年間8万人だった市街中心部の観光客入り込み数は、2010年度に52万人、2011年度には61万人に増大し、「フラノ・マルシェ」周辺の飲食店ではこれまでみたことのないような行列が出現した。
◎まちづくりや地域ブランド力を高めるために必要なこと
・町をよくしたいと思う人の組織化
・地域資源の見直しと活用
→全国区になり得る価値の発見と創造と発信
・まちのブランドイメージを上げることの必要性に対する共通認識
・フェアでセンスの良いリーダー
・得意の専門分野を持ち、まちづくりの志をもつメンバー
パネルディスカッション発言要旨
パネリスト:抜山嘉友氏(財団法人オホーツク地域振興機構研究員)、柳谷亜紀子氏(清里町・農業)、伊成博次氏(美幌町経済部耕地林務主幹)、水谷洋一氏(網走市長)
・農林水産業者は、1次産業生産者としての枠組みから外れて、加工やサービスに踏み込むことを敬遠する傾向が強い。
→新しいことに踏み込むことに躊躇するのはやむを得ないともいえるが・・・・
・1次産業者が新しいことに挑戦する場合、女性が関係していることが多い。
→女性の場合、単なる生産者として稼げればよい、という発想ではなくコミュニティや仕事に対する充実感を求める傾向があり、男性とは異なる動機付けで6次産業化に踏み出し成功するケースがみられるのではないか。
・流氷観光に台湾からの観光客が多いことから、中国本土の観光客誘致のために上海の観光業者にPRを行ったが、中国本土では流氷の知名度は全くない。
→非常に大きなマーケットが手つかずで残っていると感じた。
・人口減少や少子高齢化は不可避の社会現象だが、急激で破局的に衰退していくのではなく、「ゆるやかな衰退」を目指すことが大切。