第28回南北海道考古学情報交換会in函館 |
テーマ報告は、昨年国宝に指定された中空土偶(愛称「茅空」かっくう)について。
著保内野遺跡出土のこの土偶は、昭和50年8月24日に旧南茅部町著保内野で、ジャガイモの収穫作業中に不時発見された。
昭和54年に重要文化財指定を受けている。
写真の土偶はレプリカ。
全部で四体のレプリカが存在するが、レプリカといえども専用の保管ケース(写真は展示ケース)に収められている。
レプリカでもこれほど大切にされるのだ。
市立函館博物館の霜村紀子さんは、中空土偶の造形・装飾について美術的な観点から解説を行った。
要点は下記のとおり。
(1)中空土偶は器(土器製作)の延長として造られたこと
→下部単孔土器や人面装飾付土器の延長
(2)胸や臀部を強調したビーナスではなく、性別を超越した存在として製作されたこと
→仏像にも通じる
(3)プロポーションに歪みがあり、特に顔の部分は首をかしげたようにみえること
→このため、愛嬌のある顔に見える
霜村さんの視点には、考古学研究者ではなかなかたどり着かない。
考古学研究者は対象を観察した際に生じる心の動きには無関心だ。
系統性、類似性、関連性を見いだし記述しようとする。
美術を専門とする霜村さんが考古学者と違うのは、造形・文様とそれが我々に与えるイメージとの因果関係を考察の対象としている点につきる。