第3回知内学のすすめ「地震の仕組みについて-活断層調査をとおして」 |
原発再稼働をめぐって専門的な議論を目の当たりにする機会が増えている「活断層」をテーマにした講義です。
以下に講義の要旨をまとめてみました。
雁沢先生の研究テーマ
雁沢先生の研究テーマは活断層が最後にいつ動いたのかを調べること。
活断層の動いた年代を知ることによって地震の周期がわかり、次に起こる地震の予知につながる。
世界の地震
世界で地震の多いところは、日本列島周辺、ヒマラヤ、アメリカ大陸東海岸などで、地震が少ないと思われているヨーロッパも、ギリシャなどでは多くの地震が発生している。
マグニチュード9を超える地震は、最近の100年で6回発生しており、2011年の東北太平洋沖地震もマグニチュード9を超える巨大地震。
プレート型と直下型
地震には、太平洋プレートに沿って起こるプレート型の地震と、内陸部で発生する直下型の地震がある。
プレート型の地震に比べて、直下型では地震のエネルギーを示すマグニチュードは小さいが、地表に近いところが震源となるため、人間の生活に大きな影響を与える。
2011年の東北太平洋沖地震は、プレート型の地震で、水平方向に24m、垂直方向に3mもの地殻移動があった。
津波堆積物
津波は大量の土砂を陸地へ運んでくる。
これを津波堆積物と呼ぶ。
宮城県で津波堆積物と思われる堆積層が、十和田火山灰(915)直下で検出された。
この津波堆積物は、西暦869年に発生した貞観津波の津波堆積物ではないかと推測されたが、当初、地震学者は受け入れなかった。
断層のできかた
対向する力が加わると、石は斜め45度の方向に割れる。
学生にこのことを予想させると、縦に真っ二つに割れる、とかぐちゃぐちゃに割れる、というような答えが返ってくる。
断層は、岩石に大きな力が加わって、斜め方向に割れ目が走る構造として確認できる。
そして、断層の周辺は、硬い岩石がぐちゃぐちゃの粘土状(破砕帯)になる
直下型地震と活断層
プレート地震は海の中で発生するので、陸上でみられる断層は直下型。
直下型地震は近畿地方周辺に多い。
阪神淡路大震災の野島断層も直下型の断層である。
野島断層(阪神淡路)は、覆い屋がなされ展示施設になっている。
地表部では50cmほどの段差をみることができる。
岐阜県の根尾谷断層(濃尾地震)は、世界で初めて地震と断層の関係が明らかになった断層である。
直後に撮影された写真が残っており、現在でも6mぐらい上下にずれた地形をみることができる。
道南の活断層
一般的に、平野と山の境界には断層があることが多い。
函館平野西縁の北斗市大野向野、北斗市館野などで活断層が確認されている。
こうした函館平野西縁断層の上には住宅地が形成されていることが多い。
原発と断層
鶴賀原発の敷地内には浦底断層があることがわかっている。
現在問題となっているのは、この浦底断層が活断層であるか否か。
原子炉直下にD-1破砕帯があり、これが活断層であるかどうか、浦底断層とつながるかどうかが問題となっている。
地震の周期性と予測
地震は周期的に起こるので、ある程度の予測が可能。
したがって、過去の地震の履歴を知りたい。
地層の年代測定には自然科学的分析を行う(ルミネッセンス年代測定)。
道南の自然災害史
記録のある1640年の駒ヶ岳噴火以降、3200人の死者が発生している。
森町鷲の木の津波堆積物は1694年の駒ヶ岳山体崩壊にともなう津波堆積物の礫層の直上に駒ヶ岳の火山灰が堆積している。
函館平野西縁野地震は、活動周期13000~17000年で、最終活動年代はおよそ14000年前。
知内町の主要施設は海沿いに立地しており、大きな津波では、町の公共施設の多くが被害を受けると予想される。
避難場所など、日頃から意識しておくことや、代替えの施設を準備しておくことが必要。
質疑
約1時間の講義の後、質疑が30分以上にわたって行われました。
Q:TV等の地震情報で、自沈直後に津波の有無がわかるのはなぜか。
A:津波が起きるのは地震により海底が持ち上がるケース。海底が震源の場合は注意が必要。地震の規模が大きいと海底が持ち上がる量が大きく大きな津波となる危険が高い。震源の位置と地震の規模で津波の危険性を判断している。
Q:知内町内の森越にも活断層があると聞いているが、本当なのか。
A:よくわからない。トレンチ調査はやっていない。航空写真などによる地形のずれが確認されている。5km程度の短い距離なので、問題がないと考えられる。
Q:断層調査はどのような手順で行われるのか。
A:地形がずれているかどうかを空中写真で確認。ずれが長距離に及ぶ場合には断層である可能性が高い。断層の直交方向にトレンチを掘削して、地層断面で判断を下す。
Q:プレートが動く理由は何か。
A:現在ではプレートが動くことは間違いないと考えられるが、そのメカニズムはよく分からない。海と陸のでは構成する岩石が異なっており、海の岩石の主体を占める玄武岩は比重が大きい。重い岩石が海溝から引きづられるように地下へ潜っていくと考えられる。反対に、海嶺からはマグマがふきだす。海嶺の多くは深い海の底だが、アイスランドは海の底の岩石が陸上に吹き出す場所である。
Q:大澗原発について、断層があるとされているが、調査が進んでいるのか。
A:調査は進んでいない。海底の地形を根拠に主張がされているが、根拠は薄弱。
Q:鶴賀原発の活断層調査について、なぜ専門家なのに、結論が違うのか。
A:様々な政治的なフィルターがあるのでないかと想像する。
Q:鶴賀原発内にある浦底活断層は12万年前以降に動いたかどうかはわかっているのか。
A:浦底断層の最新の活動はわからない。
Q:活断層の定義である12万年前にはどのような意味があるのか。
A:地球環境として、温暖な時期。直近では4回の大きな寒冷期と温暖期の繰り返しがあるが、最後の温暖期の真ん中で明確な指標としやすい。たとえば、この時期に形成された地形面は明確であり、指標としやすい。
Q:地震活動期に入ったという話があるが、実際はどのように考えられているのか。
A:タイムスパンをどの程度にとるかの問題ではないかと思う。
江戸末期や中世末期に大きな地震があるが、プレートは常に動いているので、平均的にみれば均一に起きているといえるのかもしれない。
タイムスケールのとりかたで決まるのではないかと思う。