FOSS4G北海道2013レポート【コアデイ】 |
基調講演(1)オープンなジオをめぐる最近の動き
OSGeo財団日本支部代表の森亮さんの基調講演。
アップルの地図騒動によって、「ジオはみんなのもの」ということが図らずもで明らかになったことを示されていました。
地理情報は「誰もが使える」、「実際に使える」ものになっていることがよくわかる事例として、アップル騒動を取り上げていました。
オープンなジオのためには「利用」、「編集」、「配付」の「自由」がセットになっていることが前提と述べ、「オープンとフリーは車の両輪とおっしゃっていました。
「データを徹底的にいじる」というトレンドによって、QGISやGRASSの利用者が世界的に急増しているそうです。
実務層が利用することでその周辺の人びと(たとえば学生やアルバイトなどが考えられそうだ)にも利用が拡大する、と述べられていました。
「すぐに配信」というもう一つのトレンドは、「MapBox」のような地図配信サービスを生みだし、より利用者の側に立ったサービスが生まれているようです。。
「システム開発」という行為そのものが不要となる時代が徐々にやってくる、と確信を持って話されていました。
利用者のボトルネックとなるシステム開発が不要になるとき、「利用者が主人公」という時代がやってくる、と話されていましたが、そのとき、「システム開発」という仕事はどうなっているのだろうか、と他人事ながら心配になりました。
私のように利用する一方の人間にとってはありがたいことずくめなのですが・・・
基調講演(2)電子国土Webの展開~地理空間情報を簡単に活用できる社会を目指して
国土地理院地理空間情報部情報普及課の小島脩平さん。
様々なコンテンツを重ねて表示、ウェブで公開する電子国土Webの仕組みにまつわる技術的な歴史や利用のあり方について。
電子国土Webはロゴのみの表示で許諾不要となっている点、OpenLayersに対応して様々な環境で表示できるようになっており、最近は非常に利用しやすくなっていると感じています。
QGISでもPythonプラグインを少し書き換えるだけで、電子国土Webが利用できるので私自身も重宝しています。
国内の地形図として、国土地理院の地図に勝るものは、ありませんからね。
そのようなWebサービスの舞台裏をお話いただきました。
FOSS4G導入から1年を振り返って~QGISで植生図を作成してみた
株式会社エコニクスの高松純奈さん。
昨年のFOSS4G北海道2012でQGIS初級編を受講して身につけた知識を会社に持ち帰って業務に活用した事例。
高松さんの事例は、植生図作成の際に判別担当者が直接地図データを作成するためのクライアントとしてQGISを導入したもの。
これまでは、植生判別者が紙地図を作成し、それをGIS技術者に渡して幾何補正→ベクタデータの編集という様な流れで作業を行っており、修正が発生すると紙地図まで戻って作業を行わなければならず大きな手間だったそうです。
高松さんは植生判別者が直接地図データを作成することで二度手間を解消しようと考えましたが、本格的なGISソフトウェアは高価で習得コストも高いため、断念したといいます。
かわりにQGISをクライアントとして利用することで、植生判別者が直接地図データを作成することができたとのことでした。
とてもFOSS4Gらしい使い方、と言えるのではないかと思いました。
高校理科とGIS~脱教科書の図、身近な植生図をQGISで作成できる
北海道長万部高校の斉藤勝也さん。
高校の理科教育の現場でのQGIS利用事例。
2009年の指導要領改訂によって、高校理科における生態学分野の比重が高まり、GISを活用できる場面が増加したとのこと。
斉藤さんの利用事例は、植生図のデータを適度にリゾルブして高校生でも使いやすい簡易な植生図を作成するのにQGISを活用したそうです。
QGISを利用した教材開発は工夫次第でいろいろなことが出来そうです。
個人単位では試行錯誤に限界があるので、こういう工夫こそ、研究会など集団で取り組む価値がありそうだと感じました。
QGISを考古学で使う2~文系研究者によるQGIS習得プロセス
私の発表。
昨年からレベルアップしたのは、GRASS GISを利用したラスタ解析が出来るようになったこと。
報告事例は、土地の傾斜と可視領域から遺跡立地を読み解いたもの。
考古学の場合、ラスタデータを使いこなすことが非常に重要という主張でした。
Rで「なんちゃってGIS」
統計解析環境「R」のエース、北海道大学環境科学院久保拓弥さん。
私もひそかにファンなので、今回のFOSS4G北海道で会えるのを楽しみにしていた方です。
「マウスを使うのがいや」という発言は、もはや人種が違うとしか思えませんでした。
アルゼンチンアリという外来種の分布の解析事例の紹介。
ほぼ全ての作業を「R」とか「Perl」とかのプログラミング環境で行っています。
説明を聞くだけでなんだか大変そうで、素直にGRASS GISとかでやったらよいのでは?と何度か思ってしまいました。
(「ファンです」と言いつつ、写真取り忘れました)
Fix My Street Japan 現在進行中
ダッピスタジオの川人隆央さんは、本業はWebシステムの開発だそうです。
「Fix My Street Japan」というサービスは、利用者がスマホなどで破損した道路や公共施設の画像と位置情報、コメントなどを投稿すると、それを市民に代わって川人さんが行政に連絡してくれるサービス。
驚くのは、何のメリットもなさそうなこのサービスを川人さんがけっこうな手間暇をかけて一人で実施していること。
担当エリアはなんと日本全国だそうです。
投稿を行政に電話連絡するだけでも面倒そうなのに、時には事後確認(札幌市の事例)なども行っているそうです。
川人さん自身はGISに関わっているという意識が全くないようで、本人も事例発表のオファーを受けて戸惑ったと聞きました。。
私としては、市民と行政の間にこのようなワンクッションがあると無駄な軋轢が生まれず、非常によいと感じました。
医療機関とFOSS4G
独立行政法人国立病院機構の堀口裕正さんは、FOSS4Gが医療関係者に利用される環境づくりのためにOSGeoがどのような活動を行うべきか、という提案。
提案自体はシンプルで、「医療関係者向け」と銘打ったイベントを開催して欲しい、ということでした。
「FOSS4G」というタイトルでは医療関係者は集まらないけれど、「医療関係者向け」と冠しただけで医療関係者を集めるのには十分だということでした。
同じように、医療分野以外でも「○○向け」という集客方法がFOSS4Gの普及には有効であると提案されていました。
また、「FOSS4Gハンドブック」は使えるデータのありかが示されていて非常に有効、ぜひ、改訂版の出版を、と強調されました。
ここまでつかえたFOSS4G(あれから1年)~WEBサービスとか環境評価とか
HRS株式会社時永洋一さんはばりばりの技術者。
後半戦はGISやWEBサービスのプロフェッショナルが登壇し、このあたりから、事例報告の内容自体、私はついていけなくなくなっています。
国勢調査で使われる千数百万枚もの調査区図面の出図を行った事例。
商用GISソフトウェアの機能をPythonプラグインで実現できた、という事例発表でした。
OpenLayersを活用した移動体のリアルタイム軌跡表示の事例
株式会社ヒューネスの沖観行さんは、除雪車の軌跡表示システムに関するボトルネック問題について。
大雪の時に数百台の除雪車が稼働する冬の札幌で、リアルタイムにその軌跡を表示するサービスがデータ量が一時的に許容量をオーバーする課題を解決した事例を発表。
ここの説明はまったく理解できず・・・
植生タイルの作り方
株式会社エコリスの水谷貴行さんは、昨年のFOSS4Gアドベントカレンダー「おっぱい山がどれだけおっぱい山なのか検証する方法」で、世界を震撼させたご本人の登壇。
今回の事例報告は、自分で植生タイルを作成して公開する方法。
サブリミナル効果的に挟まれる画像のおかげで、頭に残っているのは、クッキーの作り方だけなのでした。
FOSS4GHKDを愉しもう!!~HKD2013を通して考えるコミュニティ継続のアイディア
OSGeo日本支部の瀬戸寿一さん。
オープン・ストリート・マップのマッピングパーティの事例などを通して、コミュニティのあり方、イベントの持ち方についてお話いただきました。
マッピングパーティは道南でもぜひやってみたくて、懇親会では瀬戸さんから色々とお話を伺いました。
(ライトニングトーク編、ハンズオン編はまた後ほど)