新藤透『松前景広「新羅之記録」の史料的研究』 |
著者の新藤先生とは法政大学の勉強会で一度ご一緒したことがある。
その時以来のファンなのだ。
『新羅之記録』は言わずとしれた北方中世史のバイブル。
だが、これまで書誌的な分析が十分に行われてきたとは言い難い。
松前家に都合の良い意図的な記述があるとされながらも、どの部分が、なぜ、どのような意図で改変された可能性があるのか、ということについては、必ずしも明確にされてこなかった。
様々な意味でイメージだけが先行しつつも、北方中世史の基礎資料として扱われてきた経緯がある。
本書は、初めて、『新羅之記録』全体を体系的に分析した貴重な論考だ。
書誌的な分析が中心なので、本書によって北方中世史の何かが新たに解明された、ということはない。
あくまでも『新羅之記録』という史料がどのように執筆されたのか、という点を厳密に実証している。
原文引用箇所を読み飛ばしても論旨についていける親切な構成になっている。
たとえ翻刻であっても古典を読むのは嫌だ、という私のような横着な人間でも読みこなすことができる。
専門書としては、画期的に読みやすい。
大部な著作なので、まだ半分ほどを読んだだけ。
読了後に改めて書評を書いてみたい。
12,600円という価格も、ここ2〜3年では一番高価な書籍だ。
購入を決断するまでに、札幌の紀伊国屋のトイレに3回入ってしまった。