奈良文化財研究所「埋蔵文化財担当者専門研修」 |
埋蔵文化財担当者としては、一度は参加したい研修の一つだ。
研修内容はもちろん、全国の研究者と交流できる数少ない機会だ。
日本考古学協会などのオールジャパンな学会に出席するのももちろん勉強になるのだけれど、「一受講者」という無責任な立場で交流するのがなんといっても盛り上がる。
私自身、一昨年、「中近世城郭調査整備課程」を受講したが、講義の内容はもちろん、講義終了後の飲み会でもひたすら考古学、史跡整備、城郭について語り続ける、というのが楽しく、なおかつ勉強になった。
そんな「奈文研の研修」の中でも最も受講価値が高い(と思うのだが)「文化財写真基礎課程」と「文化財写真応用課程」が受講者不足のため、平成22年度は開講できなかったという。
何度も出願して、ついに一度も受講の機会を得られなかった身としては信じられないのだが。
奈文研は各自治体にアンケートを送り、改善策を練ろうとしているようだが、アンケートを見る限り、どうも奈文研の担当者は自治体の現状を理解していないように思える。
アンケート項目を見ると、研修内容をどのように改善すればよいのか、という視点で質問項目が組まれているのだが、参加者減少の要因は、各自治体、関係機関担当者の業務多忙と派遣旅費の工面の問題が第一であろう。
次いで、発掘調査業務に従事する人員が全体的に減少していることが考えられる。
いずれにせよ、研修内容に不満があることが主要因とは思えない。
今年1月に北海道埋蔵文化財センターで行われた「文化財写真セミナー」は奈文研の職員が出張し、道内担当職員を対象に行われた研修だが、30人程度の参加者があったと記憶している。
北海道内だけで30人である。
多くは業務ではなく、私費で参加していた。
業務としてであろうと、私費であろうと、担当者は2〜300km圏内での開催ならば厭わず参加するのである。
奈文研で行われる写真研修の受講者が少ない、というのは研修内容の問題ではないことは明らかである。
いささか的外れとも思える今回のアンケート結果をもとに珍妙な結論が導き出されないことを祈りたい。