第1回 文化財写真セミナーin北海道 その1 |
場所 北海道立埋蔵文化財センター
内容
「テカリのある被写体のライティング」(井上直夫 奈良文化財研究所)
「デジタルカメラでの遺物撮影と処理」(中村一郎 奈良文化財研究所)
「DTPでのデジタル画像入稿の注意点」(宮内康弘 岡村印刷工業)
奈良文化財研究所の写真担当者の方々を講師とした技術講習会
文化財写真全般を取り扱うための基礎技術を伝授された。
井上さんは、ライティングを中心とした純粋な撮影技術の講義。
中村さんはデジタルカメラを文化財写真に使用する際の機種選定の注意事項や撮影時の注意点。
宮内さんは印刷会社の立場から、デジタル入稿する際に制作側が気をつけなければいけない点について。
まずは井上さんの「テカリのある被写体のライティング」から
(1)ライティングの基本
・メインライト1灯が基本
→サブライトでコントロールするのは素人には無理
・様々なサイズのレフ板で必要な箇所に光を回す
(2)ライティングの方向
・石器の場合、稜線の左右で明暗ができるが、これを打ち消そうとしなこと
→明暗によって稜線の立体感が表現される
(3)集合写真は極力避ける
・ライティングは遺物一つ一つで異なる。
→集合写真ではベストのライティングは不可能
・特にデジタルカメラの場合、直進光以外の感度が著しく低いため、周辺部で減光、解像度が低下する。
・集合写真をそのまま掲載とするのは無駄
→数十点の石器をそのまま入稿原稿にしようと丁寧に並べるのは膨大な時間と集中力を要する。故に無駄
→俯瞰写真は切り抜きが原則なので、丁寧に並べる手間は全く無駄にになる
(4)バック(背景)は白が基本
・例外は透過する石器、錆びていない刀剣、水晶玉など
→これらは黒バックを使用する
(5)白色の陶磁器の背景への溶け込みを回避するには
・背景への溶け込みは、陶磁器本体への背景の映り込みが原因
故に → 浮かす 又は 遺物の形状に切り抜いた黒紙で背景の光を遮断する
上は立面撮影の背景への溶け込みを防ぐため、撮影範囲ぎりぎりまで黒紙で覆う。
(6)ハイライトのコントロール
・点光源なので、ハイライトが1点に収束してしまう。
デフューザーを光源から離すと光が拡散するので、光源とデフューザーとの距離でハイライトをコントロールする。
(7)カメラ本体、機材などの映り込みを防ぐ
・カメラレンズのところに、レンズの部分だけを切り抜いた黒いボードをはめる
俯瞰撮影を集合写真にしてしまうのはよくやること。
今の仕事では、せいぜい数十点の遺物しか掲載しないので、1点撮りするべきなのだろう。
並べる手間を考えるなら、確かに、1点撮りしても効率はさほど変わらないかも。
(5)で言われているのは、いわゆる「ハレ切り」なのだが、今まで、文化財写真ではやらなくても良いのかな?と漠然と思っていたのだが、やっぱり必要だということだ。
その2へ続きます。